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昼間の事を思い出しながら白い息を吐く。
里沙は言葉を失った。俺がピアノを失ったのと同じく、里沙は何も話さなくなった。
いや、話せなくなった。
大好きだった両親を目の前で殺されたのだ、無理もない。
それでも俺は里沙が言いたいことは何となくわかった。
そんな里沙も他人より多く俺に笑顔を向けてくれた。
里沙のペースに合わせて歩くようになったのもきっと慣れだ。
里沙の細い指が無言の俺の手にすがりつくように触れた。
右手のもう塞がったはずの傷口がまるで里沙の体温に当てられたように疼いたが、俺はその手を見失わないように握ることしかできなかった。
傷の舐め合いだってわかっている。
それでも俺はこの手を離したりしないだろう。
寒い冬の夜、俺と里沙は街の中を歩く親子のように寄り添って歩いた。
『モノクロの絆』
(あーあ、結婚式とか泣くのかなー)
(………?)
(んー…何でもない。それより帰ったらグラタンだ)
(!……っ!)
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