『拝啓、上の人様』

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そう、ただ一つ…… 毎日夜2時を回る頃、 それは聞こえてくる。 ドン、ドン、ドン… ドン、ドンドン… カツカツカツ… 何か重い段ボールを床に落とすような音や、部屋の中でヒールの高い靴で歩くような音。 極めつけに先日は五階建ての三階なのに雨漏り。 流石にその時はビビった。 その話をするとよく我慢してるなと言われるが、家賃が安いし争いごとは望まない平和主義なもので。 一度だけ文句を言おうと四階まで行ったことはあるが、丁度出てきたその人に言葉を失った。 401室から出てきたのは女性。小柄で黒く長い前髪であまり顔は見えなかったがチキンな俺には十分すぎるホラー体験だった。 それ以降、文句を言うのは諦めている。 ドン、ドンドン… カツカツカツ… 今日も彼女は何がやっているな。 ベッドに寝ころびながら天井を見上げてそう考える。 『拝啓、上の人様』 (ホント、何してんだろうな?なぁ、田中さん) (………) (田中さん、いつも外見てるけどなんか見えんの?) (……………) (明日も一限から授業か。おやすみ、田中さん)
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