『おひめさまが泣いた』

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職員室に着くと、彼は進路希望調査の紙を提出して直ぐに戻っていったみたいだ。 私は……成績と進路について…… まあ私のことはさて置き 先生と一通り話を終え教室へ戻る途中、中庭に面する渡り廊下を歩いていると、一足先に職員室を出た筈の彼を中庭に見つけた。 彼の隣には運動部で有名な助っ人。色白な彼とは対象で日に焼けた肌が目立つ。 それと、彼の妹。 あんまり似てないけど、スラリと伸びる手足や日本人離れした美少女なのは間違い無く彼と同じ遺伝子だろう。 色んな意味で目立つ3人を横目で見ながら通り過ぎようとした時だった。 艶のある彼の黒髪。その合間から見えた眉間の皺。 困ったような、悲しそうに下がる眉。 薄く笑みを作る唇。 見えたのは一瞬。 それはまるで、―――
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