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「うーむ……。何とか赤点は免れたけど、ギリギリだな」
返ってきた答案用紙をじっとりと眺めて、溜め息を吐いた。中間は簡単って言った奴出てこい、平手打ちしてやる。
……なんて。
私は山城ましろ(やましろましろ)、一年五組。
頭文字のやを取るとましろましろと名前が続くのだ。ちょっぴりコンプレックスだったりする。
「ましろ、テストどうだった?」
落胆する私とは対照的に、何やら上機嫌な女の子が私を覗き込む。
彼女はひーちゃん。高校の数少ない友達である。
「そりゃあ酷いもんだったよ……! 進級が心配」
「そっかぁ。じゃあ次から一緒に勉強しようね」
何て会話をしていたら、廊下が騒がしくなってきた。
主に女子生徒の声で、時折「きゃあ」なんて黄色い悲鳴すら聞こえる。
「騒がしいね。何だろ」
「北城先輩でしょ」
北城不比等(きたしろふひと)、三年生。何組かはわからん。
この先輩は、入学した時から凄かった。女子生徒皆、こぞって噂するくらい完璧な人らしく、頭も顔も良いとか。
私はまだ見たことがないけれど、とにかく人気なのだ。
「変なの。元はおんなじ一般人でしょーよ」
「それは実物見てないから言えるんだよ」
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