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まさか、と私は木を回り込んでみる。すると私のいた所から真後ろに位置する場所で、幹に背を預けた先輩がいた。え、最初からいたの?
「あ、あー。先輩」
「ヒデーよなぁ、忘れたふりして帰ろうなんてさ」
「え゛!?」
な、何故それを!?
私口にはしていないはず、ちゃんと心に留めておいたはず。先輩には読心術の心得があるのか!?
「……くはは! 何かスゲー顔してっけど山城、お前全部口にしてたんだからな」
「オウッフ! そんなばなな!」
「ったく、普通思わねーぞこの俺様を置いて帰ろうなんて」
「……あの、スルーしないでくれません? ひどく惨めな気持ちになるんですけど」
何だよ仕返しのつもりですか先輩。
「まっ結果的にはちゃんといたわけだし。行くか」
「や、だから何処へ……ってぎゃあ!」
ちょ、ちょっと何してんですか!
慌てふためく私を楽しそうに見ながら先輩はずんずん歩き出して、それに伴い私も少しつんのめりながら歩き出した。
や、ていうか!
「先輩!」
「あ?」
「手!」
「いいだろ、別に」
よかないですよっ!
手のひらから伝わる先輩のでっかい手の温もり。あっこの人手は温かいのかなんて思いながらも放してもらおうとぶんぶん振り回す。
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