616人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
結局諦めて、先輩に腕を引かれるまま歩いていくと、カランコロン、と涼しげな音。その時先輩が何か店に入ったことに気付く。
(喫茶店……)
「二名様ですか?」
「はい」
「ではこちらへ」
美人なウェイターさんに言われるがまま席につく。
先輩はメニューを開いて、「何か選べよ」と視線を落としたまま言った。
……えぇ、と。
「や、意味わかんないんですけど」
「はあ? 何言ってんだ」
だっていきなり放課後待ってろって言われて、何かと思えば行き先を告げられず腕を引かれて気付けば喫茶店、そんで何か選べよ。
訳分からんじゃないですか。
「あのですね、何で私を連れてきたのか教えてくれません?」
核心をついて問えば、先輩はメニューから目を離して顔を上げた。コイツ、本気で馬鹿か、なんて言いたげな顔をしている。
先輩だけど殴りたい。
「お前は喫茶店に来て何するかもわかんねぇのか」
「んなわけないじゃないじゃないですか。飲んだり食ったりでしょう」
「わかってんなら聞くんじゃねーよ。さっさと選べ」
んな、な!
なんて暴君……! 何でこの人モテんだろう、爽やかさなんて微塵も感じないんですけどっ!
最初のコメントを投稿しよう!