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「まぁ見たって変わんないと思うけど」
くあっ、と欠伸を一つ。
「確かにましろ、興味なさそうだけど、こういう色恋」
「うん、私が今気になるのは今日の夕飯どうしよう、だよ。今日の当番私なんだよね」
「弟と二人だっけ。大変だねぇ」
そう、私は一つ下の弟と暮らしている。両親は随分不定期な仕事をしているからあまり家にいないのだ。
「本当だよ。最近アイツバックバク食うから色々考えてんの」
「うわぁー主婦だ」
なんて話をしていると、いきなりクラス内がざわりと沸いた。
女子達はきゃいきゃいと話し始め、男子も何やらヒソヒソと話している。
私はひーちゃんと顔を見合せ首を傾げた。
「なぁ、山城ましろ、って奴、このクラスにいるだろ?」
そんな中、男特有の低い声が響いた。
刹那、女子達は黄色い悲鳴を上げ始める。どうやらその人物が、このクラスの異様な雰囲気の元凶らしい。
……って解説してる場合じゃない。
山城ましろ、って言ってた。それは十中八九私じゃないか。
私は立ち上がって声のした扉の方へと歩いていく。
すると扉を塞ぐように、一人の男が立っていた。
「はい、山城ましろは私ですが何か?」
すると男はニッ、と笑った。
「話、あるんだけど」
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