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「そんな性悪じゃねえよ」
「……」
まぁ私にケーキに食べさせることで先輩にメリットもデメリットもない。
まぁ仮に金返せと言われても、お小遣いから出せば問題ないよね、うん。まさか利子なんてつかないと思う、し。多分。
「……じゃじゃあ、ちょっとだけ、ちょっとだけ、イタダキマス」
「ちょっとだぁ? まさか食いかけを俺に食わせる気じゃねえだろうな」
「……一個がっつり食べさしてイタダキマス」
いちいち揚げ足取らなくてもいいじゃないか、先輩め。
けど、反発するのもあれなので私はフォークを手に取る。ううわぁ、美味しそう。
さくりとフォークで切って、一口。甘い匂いと、ほわりと伝わる、甘い味。んまい。
「先輩、私二個も食べませんから、そちらはご自分で」
「あーあー。わかったわかった」
やれやれといったような素振りをしてから、先輩はフォークを取る。
何でやれやれだ、頼んだの貴方!
「先輩、甘いの好きなんですか?」
「……嫌いではねぇよ」
……ん?
それはちょっとした質問だった。本当に、何となく聞いただけ。
けれど、その先輩の一瞬の表情に、私は少しだけ違和感。先輩が、目を、逸らした。
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