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「話、ですか?」
ちろり、と足下に目を落とす。青色の上靴、三年生か。
「そ。ちょっと裏庭まで」
裏庭、って。移動すんの?ここじゃだめなのかな、正直とても面倒臭い。
「あー、と。すぐ済みますか?済むんならここでよくないですか?」
ぼりぼりと頭を掻きながら言ったら、いきなり後ろから腕を引かれた。
目の前の先輩から暫しの距離を取り、その女子達は私を取り囲んだ。
「ちょっとアンタ! 北城先輩に向かって何て態度よ!」
「気を引こうとでも思ってるわけ!?」
「話しかけられただけでも光栄に思いなさいよ!」
う、おっ!
そんな矢継ぎ早に言われても困るのですが……!
ていうかアレだね、私こんなに女子に話しかけられたの高校入って初めて。
何て妙な感動を感じていたら。
「そいつ、借りちゃダメかな?」
爽やかな笑顔で聞いた先輩に、女子達は顔を赤らめて私を押し出して「どうぞご自由に!」と言った。
ってちょっと待て。
「ひーちゃん、」
「いってら!」
ま、満面の笑顔。
「じゃ行くか、山城」
「……」
……一体何だっていうんだ。
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