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「で、お話って何ですか?」
裏庭に着き、さっさと済ませたい私はこちらに背を向ける先輩に開口一番に訪ねた。
先輩はくるりと振り返り、「まぁ慌てんな」とベンチに腰掛ける。
いや慌てるっつーか早く終わらして欲しいんですけど。
仕方なく先輩を言葉を待つことにした私は、改めて先輩を眺めてみた。
背はすらりと高くて、髪の毛は茶色っぽい。
目はキリッとした切れ長で、成る程顔は格好良い。
「まぁ座れよ」
ぽんぽんと隣を叩く先輩に、私はやんわりと断る。
「や、遠慮します。ですから用件を」
「……っとに、急かすねお前」
ふっ、と笑って先輩はポケットに手を突っ込んだ。
「珍しいよなー。女だったら皆隣座って少しでも長く居たがるのに」
「はあ」
何が言いたいんだこの人。
そう思っていたら、先輩がポケットから何かを取り出した。
出てきたのは、先輩が持っているはずのない赤い生徒手帳だった。
私の学校は、学年別で上靴と生徒手帳の色が違う。
先輩の学年である三年が青。
二年が緑。
そして私、一年が赤といった具合だ。
先輩達の学年が卒業したら、くりあがって三年が緑、二年が赤、一年が青という風になる。
つまりだ。先輩の生徒手帳は、青のはずなのだ。
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