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「……嫌いじゃねぇ、その顔。この俺様にそんな反抗的な目をする女なんて全くいねぇからな」
「服従したら返してくれるんですか」
依然睨んだまま問えばまさか、と飄々に言い放つ。
「……ま。いいや」
ぱ、と手を放した。
案外あっさりと解放したので怪訝な顔で先輩を見れば、先輩は赤い生徒手帳をこっちに投げて寄越した。
あれだけ言っておきながらイヤにすっぱりと返すものだから暫し固まってしまったけれど、今までのことはからかっていたのだと推測する。
「……めんどくさい先輩」
わざわざ裏庭まで呼び出しておきながら。
そんな私の呟きを目敏く聞き逃さなかった先輩は、「メンドーでケッコー」と言って立ち上がる。
そして立ち竦む私の真ん前で立ち止まり私を見下ろした。
背の高い先輩と視線を合わせるため顔を上げる。
そこには、やっぱり悪い笑みを浮かべる先輩がいた。
「けど」
するっと先輩の手が伸び私の頬に触れる。
大きな手のひらが私の頬を包み込むような感覚。不覚にもほんのちょっとだけ、ドキリとした。くそう。
「そんな面倒な先輩に、これから振り回されんだぜ」
は?
訳もわからず眉間に皺を寄せる私に、先輩はクッと笑い眉間を指でつついた。
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