郷愁のミモザ

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「いらっしゃいませ、お待ち合わせでございますか?」 女性のスタッフがすぐに声を掛けてくる。   「ええ、そうです」 緊張の感を含め、そう答える。   「ご案内いたします。どうぞ」 丁寧且つ笑顔でエスコートされ、フロントからBAR内部へ入って行くと、吹き抜け天井が広がり、窓際の中央部にはグランドピアノ、そしてその傍らには黒人女性ヴォーカリストがおり、BAR内にはピアノの演奏と女性ヴォーカリストのジャジーな歌声がゆっくりとやさしく流れている。 カウンターではなく、テーブルがメインのこのBARでは、テーブルから案内していき、やはり人気が高い窓際の席は先に来場した客を優先して座らせる。 そして深呼吸を軽くしてから席に着き・・ 「ごめんね、待たせちゃった?」 「?」 聞き覚えのある声・・・彼女だ。 「い、いや、早めに着いたからさ」 窓の外をぼんやりと眺めていた僕は、待ち合わせた彼女が女性スタッフにエスコートされ、席に着こうとしている事に気付かず。 更には自分の意識に同調していたかのように彼女が現れた事に驚き、動揺の色を隠せなかった。 「どうしたの?何か変よ?」 彼女に不審と思われた。 「いや、何でもないんだ。今日も綺麗だね」 普段あまり使わない台詞を口にした為、更に不審がられる。 「ありがと、まぁ、いいわ。さて、何を頼もうかしら」 彼女は出されたメニューをぱらぱらとめくり始めた。 しかし綺麗と言った事は決して嘘ではない。 彼女とは、あるパーティで知り合い、何度か食事をしている内にベッドを共にするようになり、それからしばらく付き合いが続いている。
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