4人が本棚に入れています
本棚に追加
フランス人と日本人の混血である彼女の髪はやや明るく、短くまとめている。
目鼻立ちがはっきりとしており、笑うと笑窪ができ、好感が持てる。
背はそれほど高くはなく、今日はホテルの内容を意識していたのか、グレーのパンツルックに黒のロングコートで、シック且つエレガントにまとめている。
「決まったかい?」
僕は頃合だと思い、彼女に聞いてみた。
「んん、どうしようかしら」
「君、シャンパンが好きだったよね?」
「ええ、でも今日の私にシャンパンの炭酸は少しきついわ」
少し不満気な顔をしてメニューを閉じ、彼女が答えた。
「そうなんだ。じゃあ、カクテルにでもしてもらって飲み易くしてもらおうか?」
僕は妥当案として勧めてみた。
「カクテルねぇ、何かおすすめはあるのかしら?」
困惑気味にこちらを見ながら彼女が聞いてくる。
「そうだなぁ、あ、そういえば君、コート・ダ・ジュールヘ何度か旅行に行っているよね?」
だいぶ前に聞いた話を思い出し、彼女に問いかけてみる。
「ええ、家族旅行で、父が好きなのよ、南フランス。でもどうしてそんな事を聞くの?」
彼女は不思議そうな顔をして僕を見ている。
「うん、ミモザってカクテルがあるけど、試してみる?」
僕は即座に切り替えした。
「ミモザ?」
「そう、ミモザ」
「花のミモザの事かしら?」
「そうだよ、知っているだろ?」
「もちろん知っているわ、ミモザは南フランスを象徴する代表的な花ですもの」
「そう、向こうじゃミモザ祭りなんてものがあるくらいだからね」
「何だかおいしそうね、私、それを頂くわ」
彼女は笑窪をつくり、にっこりと微笑んでそう言った。
「お願いします」
僕は手を少し上げ、ホールのスタッフに声を掛けた。
「はい、只今」
小さく頷き、ホールスタッフが身のこなしも軽やかにこちらに近づいてくる。
「お待たせ致しました、どうぞ」
早口だがはっきりと明確に、そして声のトーンも心地よい感じで注文を取り始めた。
最初のコメントを投稿しよう!