郷愁のミモザ

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フランス人と日本人の混血である彼女の髪はやや明るく、短くまとめている。 目鼻立ちがはっきりとしており、笑うと笑窪ができ、好感が持てる。 背はそれほど高くはなく、今日はホテルの内容を意識していたのか、グレーのパンツルックに黒のロングコートで、シック且つエレガントにまとめている。 「決まったかい?」 僕は頃合だと思い、彼女に聞いてみた。 「んん、どうしようかしら」 「君、シャンパンが好きだったよね?」 「ええ、でも今日の私にシャンパンの炭酸は少しきついわ」 少し不満気な顔をしてメニューを閉じ、彼女が答えた。 「そうなんだ。じゃあ、カクテルにでもしてもらって飲み易くしてもらおうか?」 僕は妥当案として勧めてみた。 「カクテルねぇ、何かおすすめはあるのかしら?」 困惑気味にこちらを見ながら彼女が聞いてくる。 「そうだなぁ、あ、そういえば君、コート・ダ・ジュールヘ何度か旅行に行っているよね?」 だいぶ前に聞いた話を思い出し、彼女に問いかけてみる。 「ええ、家族旅行で、父が好きなのよ、南フランス。でもどうしてそんな事を聞くの?」 彼女は不思議そうな顔をして僕を見ている。 「うん、ミモザってカクテルがあるけど、試してみる?」 僕は即座に切り替えした。 「ミモザ?」 「そう、ミモザ」 「花のミモザの事かしら?」 「そうだよ、知っているだろ?」 「もちろん知っているわ、ミモザは南フランスを象徴する代表的な花ですもの」 「そう、向こうじゃミモザ祭りなんてものがあるくらいだからね」 「何だかおいしそうね、私、それを頂くわ」 彼女は笑窪をつくり、にっこりと微笑んでそう言った。 「お願いします」 僕は手を少し上げ、ホールのスタッフに声を掛けた。 「はい、只今」 小さく頷き、ホールスタッフが身のこなしも軽やかにこちらに近づいてくる。 「お待たせ致しました、どうぞ」 早口だがはっきりと明確に、そして声のトーンも心地よい感じで注文を取り始めた。
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