郷愁のミモザ

7/9
前へ
/9ページ
次へ
「じゃ、頂こう」 「うん」 二人はグラスを互いに向け合い少し上げて、そのまま傾け、小気味よく喉元へ流し込んだ。 「おいしい!とても飲みやすいわ」 「そう、よかった」 「うん、オレンジの甘みとシャンパンの酸味が心地よくて、飲みすぎちゃいそうね」 どうやらお気に召したようで、彼女は少しはしゃいでいる。 「これ、気に入ったわ。ミモザって・・・いい名前ね」 「君にとっては想いいれがあるからね。よかったよ、気に入ってもらえて」 僕は素直にそう思った。 「ええ、そうね本当に・・・、ありがとう」 こちらを見てグラスを片手に微笑んでいる。 フルートシャンパングラスが本当によく似合う。 僕はグラス半分ほどになったミモザをテーブルに置くと、煙草に火をつけ、辺りを見回した。 BAR内は少し込み合ってきており、誰かがリクエストしたのだろうか、女性ヴォーカリストが曲名を紹介し、名曲、アンフォゲッタブルが流れ始めた。 二人は勢いよくグラスを空けると二杯目のミモザを注文し、暫し曲と夜景に没頭した。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加