*エピローグ*

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「こりゃ、りん!  一人で出歩くなと言っているだろうが!」  声を荒げる邪見の前には、りんが立っていた。 「お前は人間なのだぞ?  ワシら妖怪はそう簡単に死なないが、お前は人間ー」 「…イヤっ!」  そこまで言った途端、りんが両耳を塞いで叫んだ。  今のは失言だったと気付いたが、もう遅い。 「り、りんー」  大きな両目に涙が浮かぶ。 「わわっ、泣くなりん!」  殺生丸様に知られたら、間違いなく睨まれると焦った途端、勢いよく踏まれた。 「…邪見。死にたいか?」 (ひいぃ!)  …噂をすれば影が差す。 「殺生丸様ぁ…」  泣いているりんを連れ、人気のない場所へと移動する。 「…どうした」 「邪見さまがね…」  大分落ち着いたりんに何があったのかを訊ねる。 「『お前は人間だから、ワシら妖怪よりも先に死ぬ』って…そんなことは分かってるよ。でも、それでもりんは殺生丸のお傍に居たいの」  邪見の言ったことは間違いではない。 「ねえ殺生丸様」 「何だ」 「殺生丸様も、いつかはりんのこと忘れちゃうのかな?」  予想外の言葉に、軽く目を剥いた。 「りんは死後も殺生丸様のことを覚えていたいけど…殺生丸様は何かに縛られて生きることを嫌うから、だから…」 「りん。-それ以上は言うな」  ふわりと左腕で抱きしめる。 「お前は私に初めて天生牙を振るわせた人間だ。…そう簡単には、忘れない」  初めてこの牙を振るった日のことは、一生忘れないだろう。 「他の者が忘れても、私は覚えていてやる」  人はよし思ひ止むとも  玉鬘影に見えつつ  忘らえぬかも    ―「万葉集」倭大后 
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