*変化

2/2
257人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
 最初はただの気まぐれだった。今はついて来ていても、いつかは自分から離れるだろう。  例えば百年という時は人間にとっては代を重ねる、悠久の流れ。  だが妖怪にとっては子が成人するまでの瞬く間だ。  故に人間と妖怪では時の流れも違うし、寿命の長さにも天と地の差がある。  どんなに私を慕っていても、いつかは引き離してやろうと考えていた。 「殺生丸様~」  だがそのことを知っても、私について来るのだろうか? 「お待ち下さい、殺生丸様。一体どちらへ行かれると言うのです?」  背後から自分を呼ぶ声に足を止め、少女を見下ろした。 「…りん」 「はいっ」  名前を呼ばれて姿勢を正す。  -何が嬉しい?   名前を呼んだだけだ。  そう思いながら、小さな頭に手を置く。 「人のお前と妖怪の私では生きている時も違うし、寿命の長さも違う。  故に、お前は私よりも先に死ぬ」 「…はい」  声が震えていた。 「それを承知の上で、お前は私について来るのだな?」  どう答えるのだろうか。  やはり泣くのか? 「それでもついていきます。それがりんの生き方ですから」  私は間違ったことは言っていない。もしまだりんが人の世に戻り『人間の生活』が送れる可能性があるのなら、今すぐ戻してやる。  それがりんの為だと思っていた。  だがりんは私と共に生きることが生き様だと語っている。 「あの、殺生丸様?」  黙りこむ私を、りんは怪訝そうに見上げ続けていた。 「それがお前の答えなのか」 「はいっ!」 「……。…そうか」  それだけ答えて歩き始める。りんは迷わずついて来た。 「この私について来るのなら、見失わないようにしろ」  りんは笑った。  花のような笑顔で。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!