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西の空が茜色に染まり始めた頃、邪見は岩の上に座っていたりんに言った。
「りん。食べ物は取って来なくて良いのか?」
「……あっ」
忘れてた、と少女はパッと邪見を見る。そしてりん同様、岩にもたれ掛かっていた主に「食べ物を捜して来ます」と頭を下げて走り出した。夜になるまでに捜し出さないといけない。
「待つのじゃりん、わしも行くぞ!」
慌ててりんを追おうとして転ぶ邪見に向かって、声が飛んできた。
「いいよ~!りん、一人で捜せるからぁ!」
ザッ…という風の音に、りんの足音はかき消される。
「…一人で捜せる、か」
体を起こして少女が向かった方向を見た。一年前までは「一人じゃ怖いから」とお供していたりんはもう、最近は一人でも取れるようになっている。
これが「成長」というものなのかと感激する部下を、二人の主である殺生丸は無言で見下ろしていた。
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