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冬が、
(ふゆが)
こんなにも、
(こんなにも)
寒いなんて
(さむいなんて)
「知らなかった。」
一度息をするたびに白い息が私の口元から出ていく。
外は寒い。開け放たれた障子からは雪を被った庭が見えた。
でも、
(成平様のほうが冷たい)
顔にかけられた白い布をそぉっと取り去り、布団から大分冷たくなった成平様の手を取り出して、自らの頬に押し付ける。
「成平様。」
もう、渇いたと思っていたのに。
もう、到底でないと思うほど泣いたはずなのに。
「成平様。」
私の頬は熱く濡れていて。
(お伽草子のように、私の涙で成平様が今一度瞳をお開けくたされば、よろしいのに)
叶わないと知りながら、私は本気でそう願って。
何度も何度も濡れた頬に彼の冷たい手を押し付けた。
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