第一章

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      告白   午後9時、キャンプ恒例の肝試し大会が始まった。   1人1枚クジを引いて同じ番号の男女がペアで行くありきたりのやり方だ。   俺は8番、タカシは13番、そしてアユミが…………8番だった。   『ユキ君と一緒。ちゃんと守ってね』   笑顔で近づいて来るアユミ。   俺はタカシの顔をチラッと見て言葉を失っていた……。   タカシが悲しそうな顔をしている。   俺はさっきタカシの気持ちを聞いたのにどう接すればいいのか分からない。   そんな事とは関係なく順番が回ってきてしまった……。   無邪気にタカシに手を振るアユミ。   それを見て無理矢理笑顔で見送るタカシ………。   肝試しコースは1周30分近くあった。   その道中、アユミは俺にくっついたまま離れない。   アユミが話しかけてきても俺は『うん……』ぐらいしか言えない。   しばらくすると   『ユキ君どうしたん?何かおかしいよ』   アユミが俺に問い掛けてきた……。   でも俺は『何もおかしくないよ』とぐらいしか言えなかった。   この30分がどれほど長かったかは、俺とタカシにしか分からない。   2人にとってどんだけ苦しかったか………。   やっとの事で肝試しは終了した。   でも俺は、タカシにどう話しかければいいのかわからない。   『ユキ!!気にすんなって』   タカシの方から声を掛けてきてくれた。   『別にユキの事嫌いになった訳じゃないし、ちょっと嫉妬してただけだよ』   タカシが笑顔で言ってくれたおかげで俺はモヤモヤが消えて無くなっていた。   『お前、まじ頑張れよな。応援してるからさっ』   俺はタカシに励ましの言葉を贈る。   でも心の中では、まだ複雑と言う気持ちが残っていた。
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