第一章

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     苦しみ   俺とアユミの間に沈黙が続く………。   もう何十分、沈黙が続いただろうか。   俺は何を話せばいいのか分からない。   でもアユミが泣いてる理由はなんとなく分かってたし、その事についてだけは触れなかった。   『アユミ……。ほぉらせっかくカラオケに来たんだから楽しもうよ』   俺はこれ以上の言葉が出てこない。   『うん………。ユキ君ごめんね。せっかく来たんだから楽しまなくちゃね』   アユミは涙を洋服の裾で拭いて、鼻をすすって泣きやんでいく。   俺はアユミが泣きやむのをずっと待っていた。   本当は、いろいろ聞きたかったけど……聞いた所でどう答えればいいなんて分からなかったし。   『よしっ!!戻って歌いまくろっか?タカシ君一人だしね』   アユミが力強い声で俺に言ってきた。   俺とアユミが部屋に戻るとタカシはマイクを握りしめ『おっかえりぃ』と何事もなかったかの様に出迎えてくれた。   きっと精一杯の励ましだと俺は思ったので、それに俺も答えた。   やっぱり、俺らはこうでなくっちゃいけない。   多分、3人共同じ事を思っていただろう。   カラオケからの帰り道、俺はずっと考えていた。   そう、タカシから聞いたアユミの気持ちを……。   俺は本当に分からなかった……どうすればいい?なんて聞けないし。   アユミを家まで送りバイバイした後、タカシが『ちょっと公園に寄っていかん?』   俺は『うん』と答えた。   何を話すかは分かっていたから。   俺もタカシに聞きたい事あったし。
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