第一章

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     2学期   長い休みも終わり、またいつもの生活が始まった。   『皆、休みはどうだった?』   先生の元気な声が教室に響き渡る。   『はいっ。めっちゃ充実してましたよ。まだ休みたいけど……』   カツミがふざけた事を言っている。   でも正直、今回だけはカツミの言葉に皆、賛成していた。   始業式も終わり、俺は部活に行く準備をしていた時   『ユキ君、ちょっといい?』   アユミが俺に話し掛けてくる。   『キャンプの時の事、タカシ君から何か聞いた?』   『いや……何も聞いてないけど……』   俺はとっさに嘘をついてしまった。   本当の事を言えば何かいけない方向へといきそうだったから……。   『そっか……なら何でもない。さぁて部活に行こっか……』   アユミが少し悲しげに答えると教室を出ていった。   俺は、アユミの悲しそうな後ろ姿を見ながら公園でタカシと話していた事を思い出していた………。   タカシが好きなのはアユミ。   でもアユミは俺が好き。   でも俺は、アユミに対して特別な感情はない。多分………。   部活をしてる間は何もかも忘れられる。   俺は部活を休む事なく行き続けた。   俺にとってはこれが逃げ場だと思ったから………。   でも部活が終わると現実世界へと引き戻されてしまう。   今日も部活が終わって、俺とタカシとアユミは一緒に帰っていた。   表側は3人共明るく話してたけど内心はそれぞれが悩みを抱えていたと思う。   それでも誰一人として悩みを打ち明けたりはしなかった。
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