存在

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20XX年6月某日、梅雨入りをした日本列島は類を見ない大雨になっていた。近年ゲリラ雨という集中豪雨が流行り、災害にもなったためここ数日はそれを恐れてからか外出にでる人が少なく昼でも夜のような感じだった。 雨が降り続けて4日が経った。太陽の光が恋しくなる一方で災害の恐れを心配し始めた住民は災害対策として各地避難所や高台に移動し始めたのだ。 雨が降りだして5日が経った。とある町に避難勧告が出され、住民は一斉に避難し始めたのだが一人の男性は避難しなかった。 彼の名前は樹と書いて「いつき」、どこにでもいる28歳の社会人で独り身。これといってやる気もなくただ過ごしている日常に嫌気がさしていたのだ。人間死ぬときはいつでも死ぬが口癖だった。だから大雨で災害になっても逃げなかったのだ。毎日毎日なんで生きているのだろう、僕の存在価値は何だろうなどを常日頃考えていた。 家にあった食料の底がつき、期待はしてないが近くのスーパーとコンビニに行くことにした。案の定雨は降っていたが町は静寂、一人だけ取り残されているという実感を得るには十分すぎるほどだった。スーパーはシャッターが閉まっていたがコンビニは自動ドアを無理矢理こじ開けた。カップラーメンや缶詰を取り、いくらかわからないが3000円をレジに置いて外にでた。帰路につく途中、この町には僕しかいないという寂しさよりもちょっとした優越感みたいなものを感じていた。
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