4.帰路

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「あれ、ナネッテじゃない。見送りに来てくれたの?」 買い物袋を提げたダイゴがこちらに向かいながら言った。 「うふふ。そういうわけではないんだけど、そういう事にしておこうかな。」 ナネッテはダイゴと挨拶のキスを交わしながら楽しそうに言う。 「さぁ、そろそろ出発ロビーに行くか。」 ルドはエレベーターを指差す。 もう?あと30分は大丈夫だろ?せっかくナネッテが来てくれたのに、少しくらい話をしても神が許すだろう? ところがルドは、さっさとエレベーターのボタンを押す。 僕とダイゴ、そしてナネッテはやってきたエレベーターに乗り込み、扉を閉めようとしたら、突然ロビーから「待ってー!」と大きな声がして、東洋人の集団が中にドヤドヤーっと入ってきた。 あわわわわ。 来る来る来る来る、人が来る! 僕はヴァイオリンケースを胸に抱えて、『女王』と弓を人の波から守る。 エレベーターの奧に押しやられ、押し潰されそうになりながら、僕はこの東洋人集団が日本語を話していることに気付き、近くで潰されそうになっているダイゴと目を合わせて苦笑した。 そしてふと目の先で、ルドとナネッテが、抱き合うような形で押し潰されそうになっているのに気付く。 「…。」 エレベーターがスーッと動き出す。 「…。」 身体が密着した状態で、直立不動のルドと、同じく直立不動のナネッテ。 「…。」 一階から三階まで、ノンストップのほんのわずかな時間。 ナネッテが目を閉じて、ルドの鎖骨に頬を寄せた。 「…。」 ちょっと目のやり場に困って、僕はうつむく。 別にすごくイチャついてる訳ではないのに、すごいラブシーンみたいに感じるのが不思議だ。 でも、二人の想いが伝わったような気がして、胸がキュンとなる。 エレベーターが止まり、扉が開くと、また一気に集団が外に飛び出し、僕たちも後れて外に出た。 ルドとナネッテは、また何事もなかったかのように、ダイゴを交えて普通に談笑を始める。 「…。」 ナネッテは本当に見送りに来たんじゃないかもしれない。 ルドが言い出せば、一緒にニューヨークに来るつもりかもしれない。 でもルドは決してそれを言い出さない。 1000%それはないと、僕は言い切れる。 優しい目で彼女を見るルド。 そして、恋する女性特有のオーラを輝かせるナネッテ。 切なさモード、全開だ!
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