4.帰路

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僕はたまりかねて言った。 「頭が痛いから薬局に行ってくる。ダイゴ、通訳についてきて。」 「頭痛?熱か?」 ルドは僕のおでこに手をやろうとするけど、その手から逃げてダイゴの腕を引っ張る。 「通訳って、ジムの方がイタリア語はできるじゃない?」 「頭が痛いから忘れた。」 ダイゴの鈍感! その上、ルドも言う。 「空港職員は英語くらいできるぞ。」 「Watashi wa Eigo ga Dekimase~n。」 日本語で言う。 アヤが都合が悪くなるとよく言うセリフだから、僕もこれくらいは言える。 とにかく、ルドとナネッテを二人きりにして、ちょっとくらい別れを惜しませてあげようと、気を効かせて邪魔者は消えるのだ。 僕とダイゴは同じフロアの薬局に入り、薬を物色するフリをする。 「ジムはアスピリンは飲んでも大丈夫なの?」 未だに鈍感なダイゴは、僕のために真剣に薬を物色してくれる。 「いや、そうじゃなくて。」 僕はこっそりとルドとナネッテのいる方向を指差した。 案の定、僕たちに気兼ねのいらなくなった彼らは、とてもいい笑顔で話をしている。 「へー。」 ダイゴは驚いたように声をあげた。 彼は、あの二人が二晩、同じ部屋にいた事を知らないんだ。 「ルドがナネッテに取られてもいいの?」 そうニヤニヤ笑いながら言われたけれど、取られないって分かってるから、ホンの少しだけ協力する。 とはいえ、あまり長く薬屋にもいられないので、隣の本屋に移動して、そこで時間を潰す事にした。 「…。」 漫画雑誌を立ち読みしながら、見てはいけないと思いつつ、ついつい二人の方を見てしまう。 談笑するふたり。 何を話してるんだろう。 肩ぐらい抱けばいいのに、ルドは両腕を胸の前に組んでいて、その気配は全くない。 ほら!僕にいつもやってるみたいに、髪を触るとか、頬を撫でるとかできるだろう? 「…。」 そんな所に突っ立ってないで、どこかベンチに座って、手でも握っちゃえばいいのに。 「…。」 でも、体はくっついてないけど、二人の視線は絡み合ってる。 お互いの姿を、目にしっかりと焼き付けようとしているみたいに。 「…。」 あぁ、焦れったい! “プラトニック”の幅も広いんだ。 友人関係内の普通のスキンシップくらい、とっととやってしまえ!
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