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僕はたまりかねて言った。
「頭が痛いから薬局に行ってくる。ダイゴ、通訳についてきて。」
「頭痛?熱か?」
ルドは僕のおでこに手をやろうとするけど、その手から逃げてダイゴの腕を引っ張る。
「通訳って、ジムの方がイタリア語はできるじゃない?」
「頭が痛いから忘れた。」
ダイゴの鈍感!
その上、ルドも言う。
「空港職員は英語くらいできるぞ。」
「Watashi wa Eigo ga Dekimase~n。」
日本語で言う。
アヤが都合が悪くなるとよく言うセリフだから、僕もこれくらいは言える。
とにかく、ルドとナネッテを二人きりにして、ちょっとくらい別れを惜しませてあげようと、気を効かせて邪魔者は消えるのだ。
僕とダイゴは同じフロアの薬局に入り、薬を物色するフリをする。
「ジムはアスピリンは飲んでも大丈夫なの?」
未だに鈍感なダイゴは、僕のために真剣に薬を物色してくれる。
「いや、そうじゃなくて。」
僕はこっそりとルドとナネッテのいる方向を指差した。
案の定、僕たちに気兼ねのいらなくなった彼らは、とてもいい笑顔で話をしている。
「へー。」
ダイゴは驚いたように声をあげた。
彼は、あの二人が二晩、同じ部屋にいた事を知らないんだ。
「ルドがナネッテに取られてもいいの?」
そうニヤニヤ笑いながら言われたけれど、取られないって分かってるから、ホンの少しだけ協力する。
とはいえ、あまり長く薬屋にもいられないので、隣の本屋に移動して、そこで時間を潰す事にした。
「…。」
漫画雑誌を立ち読みしながら、見てはいけないと思いつつ、ついつい二人の方を見てしまう。
談笑するふたり。
何を話してるんだろう。
肩ぐらい抱けばいいのに、ルドは両腕を胸の前に組んでいて、その気配は全くない。
ほら!僕にいつもやってるみたいに、髪を触るとか、頬を撫でるとかできるだろう?
「…。」
そんな所に突っ立ってないで、どこかベンチに座って、手でも握っちゃえばいいのに。
「…。」
でも、体はくっついてないけど、二人の視線は絡み合ってる。
お互いの姿を、目にしっかりと焼き付けようとしているみたいに。
「…。」
あぁ、焦れったい!
“プラトニック”の幅も広いんだ。
友人関係内の普通のスキンシップくらい、とっととやってしまえ!
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