4.帰路

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「ねぇ。」 ダイゴが声をかけてきた。 「こんなところで“覗き”みたいな事をしてないで、ジムも綾子さんにお土産でも買ってあげたら。」 あぁ。 「さっきも、せっかくブランドショップに行ったのに、君はルドにくっついてばかりで、店にも入らなかったじゃない。」 「だって…。」 考え事をしていたら、バッグの事なんて吹っ飛んでしまった。 「ほら、行こう。」 ダイゴは僕の肩を叩くけど、イヤだ。他所に行くと、二人が見えなくなる。 僕が気乗りしないのを見て、ダイゴは「なんだ。理解を示しておきながら、結局は自分の目の届く範囲じゃないとイヤなんだ。」と呆れたように言うけど、すみませんね、心の狭い男で。 あれ?ルドがキョロキョロしてる。 「僕たちが戻らないからルドが心配してるよ。」 ダイゴが言ったけど、その通りだ。 ルドが何かを言いながらスーツの上着を脱ぎ、ナネッテに預ける。 薬屋に来るつもりだ。 どうして別れ際の女性を放って、必ず戻ってくる僕たちを探すのか、本当にわけがわからないけれど、とにかく僕は薬も買わずに本屋にいるわけで、これはヤバイと店を飛び出す。 ルドが僕たちを見つけ、「大丈夫か?」と走ってくるその背後で、ナネッテがルドの上着を抱きしめ、遠慮がちに頬を寄せるのが見えた。 「…。」 切ない女心だ。 「薬は買えたのか?」 ルドは僕の頭に手をやるけど、僕はその手を僕の胸に当て直して言った。 「頭は治ったけど、胸が痛い。」 「胸?心臓か?」 ルドは仰天するけれど、丸っきり馬鹿。 僕は彼の言葉を無視して、ナネッテのいる場所に向かって歩き出す。 本当にいいの? 次に再会する事があっても、その時の二人は今の二人ではないんだよ。 今この時に、最高の思い出を作っておくべきなんじゃないか? ルドはナネッテから上着を受け取ると、それを着込む。 「さぁ、行かないと。」 ルドは僕たちを見渡して言った。そして僕に「頼むから機内で心臓マヒとか起こさないでくれよ。」と言うけれど、君こそ、機内でメソメソと後悔の涙を流さないでくれ。 僕たちはチェックインカウンターに足を向ける。 ここで手荷物チェックを受けたが最後、僕たちは後戻りは許されず、そのまま階下の搭乗ゲートに直行しないといけない。 もちろん、見送り客もこれ以上は踏み込んで来れない。 最後のチャンスだよ、ルド。 キス。そうだ。キスしちゃえ!
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