2.4年ごとのリヒノフスキー

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「僕だって頑張ったんです。ナオミとも随分仲良くなったのに。」 ナオミはユウコの娘だ。 「それにしても、二人とも忙しいのにどうやってアプローチしたんだ?」 ユウコもリヒノフスキーも超売れっ子ヴァイオリニストで、世界中飛び回っている。 「メールです。ユウコさんともナオミとも毎日のようにメールを交わしていたのに、この間共演した指揮者のGに突然さらわれてしまった。」 指揮者のG。 たしか60歳を過ぎていたような…。 「君の勘違いじゃないの?共演者とソレっぽくなるのはよく有ることだよ。」 「僕は見てしまったんです。楽屋でGが彼女を押し倒しているのを。」 あちゃー悲惨だ。 「楽屋で女性を押し倒すなんて獣のような男です。僕は許せません。」 楽屋でアヤを押し倒してベルを作成した僕は何とも言えない。 「それにしても彼女は年上が好きだな。」 僕は彼にティッシュを渡しながら呟いた。 「そうでしょ?前のスヴィーテンもお爺さんだったし今回も。僕は彼女の趣味がわかりません。」 「…。」 どっかりと支えてもらいたいんだろうな。リヒノフスキーが相手だと彼女が支えなくてはならなくなる。 「だからね。風俗に連れて行ってください。」 「…。」 彼の言葉に我が耳を疑う。 「風俗に行きたい。」 「何で失恋したら“風俗”なんだ?」 「僕は彼女の事を愛して以来、他の女性に触れてません。」 まぁ、それはわかる。 「つまり、前にブラッキンさんと一緒に風俗に行ったのを最後に、四年前から清い生活を送っているんです。」 「…。」 こいつは確か、四年前のその前も四年前だった。よく耐えられるものだ。 「ねぇ、連れて行ってください。」 「ひとりで行けるだろう?僕にはオクサンがいるんだ。」 「ひとりでなんか行けないです。さっきの審査員のシンドラー教授から良い店を教えてもらったんですよ。」 審査員同士何の話をしてる? 「そこは表向きはクラブなんです。嫌だったら飲むだけでもOKです。」 「でも…。」 「オクサンに義理立てするならブラッキンさんは飲んで待っててください。」 うーん。 「男が落ち込んだ時は女体に限るでしょう?」 確かに好きな女のアノ現場を見てしまうのはあまりに残酷だし、傷ついた男にとっての一番の癒しといえば“女”だ。 飲んで待てるならそれでもいいかな。 僕は頷いてしまった。
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