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「ちょっとミヤビっ、あたしが読んでるのっ」
「ちょっと貸してぇや」
シオリの手から完全に奪ってインタビューを読む。
ブランド名の由来は、やっぱり俺だったようだ。
そして、恵梨子は今、フランスへといっていたらしい。
俺になんも言うことなく名前勝手に使って、揚句に高飛びかいっ。
会ってやるっ。絶対会ってやるっ。
なんか雲の上、全然違う世界の人っぽいけど、気にしてやらへんっ。
「へぇ…。【ブランド名の由来は?】私がこの仕事にひどく自信をなくしているときに、私のそばにいてくれた人の名前をお借りしました。服のイメージも実はその人をイメージしているんです。…だって。ミヤビ、もしかしてミヤビのことじゃないよね?ほら、ミヤビの好きな人」
シオリが言うから、俺は溜息をつきたくなってくる。
そうやなんて言ったら、どうなるんだか。
「それ、ちょっと貸しといて」
俺は再びシオリから雑誌を奪うように手にすると、図書館の階段を駆け降りた。
雑誌を脇に挟んで、駅へと向かって歩く。
恵梨子の名刺を取り出して、ストーカー扱いでもいいから会社に電話したろと番号を携帯に入れていると着信。
このタイミング、またシオリやろ思たのに、それは恵梨子やった。
俺はすぐに通話のボタンを押した。
「あんたなぁっ」
『あ、雅?久しぶり』
「久しぶりちゃうわっ。今、どこやねんっ?」
『今?渋谷…かな?』
「いつフランスから帰ってたんやっ?」
『昨日。あれ?私、雅に言いそびれて出発しちゃったのに…知ってる?』
恵梨子はマイペースやった。
俺がどんなに声を荒立たせても動じてもくれへん。
俺は大きく深く溜息をつく。
「今からそっちいくから、顔洗って待っとけや」
『え?なに?殴り込み?』
「思いっきりキスしたる」
俺は恵梨子のところへ向かうため走り出した。
俺はフラれてへんかっただけで、いっても恵梨子に突き放されるかもしれへん。
やけど…、会いたい。
ただ、顔を見たいだけやねん。
2009.7.5 FIN
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