『侑也』

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俺の家族は多い。 今ではめずらしい大家族といえるだろう。 上から男女交互に兄、姉、兄、姉、兄、姉、兄、俺、妹、弟、妹、弟と続く。 よくもまぁ、これだけ生んだものだと思う。 そう。男女交互だったのに、俺と1つ違いの兄貴、篤希と俺だけ男が続いているからか、俺は篤希と仲がよかった。 記憶のある小さな頃から、俺と篤希はまるで双子のようによく一緒に遊んでいた。 俺が高校2年、篤希が高校3年の今も何も変わらない。 俺と篤希は夜の町をぶらつく。 俺たちの親はたぶん変わっているんだろう。 俺たち兄弟への教育方針は『やりたいようにやりなさい』なんていう、完全放置だ。 とはいっても、元ヤンな父親と真面目な母親。 『ヤンキーになりたきゃなれ、やりたいことあるならやってみろ』とか言っておいて、犯罪なんて犯そうものなら殺す勢いでぶん殴ってくるだろう。 ま、そういうこと以外にはかなり甘い家。 夜遊びは許容範囲らしい。 家に引きこもっていると、逆に遊びにいってこいと追い出されることもある。 賑やかな土曜の夜、あたりを歩く人たちも楽しげな雰囲気だ。 ネオンも眩しいくらいにあたりの看板を彩り、平日の夜よりも車が車道を走る。 俺は道端に立ち止まり、休憩がてらにガードレールに軽く腰かけて篤希と話していた。 「あの、お暇ですか?」 そんな、やけに丁寧な口調で声をかけられて、俺と篤希は揃って顔を上げた。 緊張したような面持ちの女が二人。 街頭アンケートではないだろう。 篤希といるとよくある逆ナンだ。 俺と篤希は視線を合わせ、小さく笑った。 どうせ今日は暇だ。こういうのにのってみてもいっか。 俺たちはその女たちと遊ぶことにした。 声をかけてきたのが和美ちゃん。もう一人は由里ちゃん。 2人とも3つ年上らしい。 カラオケいってゲーセンいってと遊びまくった別れ際、俺は和美ちゃんとメアドを交換した。 篤希は由里ちゃんにメアドの交換を頼まれたけど、篤希は断った。 篤希には遠距離恋愛の彼女がいたから。 俺はいつもどこかで篤希にライバル意識を燃やしていた。 遠距離恋愛の彼女のことも、どこか羨ましく感じていた。 篤希の女を奪えるなら奪ってやりたいとも思う。 俺はいつも、篤希にだけは負けたくなかった。
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