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負けたくない、と兄弟にライバル意識を持つのはおかしなことではないらしい。
年が近ければ近いほど、身近にいればいるほど、比較してしまうものらしい。
二女の雫姉に聞いた話だから確かなものは何もないけど。
企業立ち上げて女社長やってるくらいだから、少しは信じてやってはいる。
「ねぇ、侑也。あんた、篤希と仲いいけどさ、疎ましく思ったり羨んだりしないの?」
パンツスーツを着こなす若き女社長、雫姉は、煙草を片手に小学生の俺に聞いた。
「なんだよ年増。旦那に相手されないからっておれにかまってくんなよ」
俺は雫姉を素無視して、雫姉の土産のプラモデルを組み立て始めていた。
雫姉は俺の頭を鷲掴みにして、ゲンコツを頬に押し付けてくる。
「あっんったっにっ、年増呼ばわりされる覚えはないっつぅのっ!このクソガキっ!!」
「いてっ!痛いっ!虐待っ!いじめだっ!母さんに言い付けてやるっ!」
「言いたきゃ言いやがれっ。母さんがしつけないぶん、私がしつけてやらぁっ!」
「ヤンキーにしつけられたくなんかねぇよっ」
「黙れ、クソガキっ!」
俺は雫姉にボロカスにやられて、床の上にダウン。
雫姉もさすがに疲れた様子で、俺の隣で息を切らしていた。
小学生相手に本気出してくる雫姉もどうかと思う。
「…あるよ」
「何が?」
「さっきの答え。篤希と比べてくる奴はいないけど、自分で比べてる」
俺は雫姉に答えてやる。
雫姉はそんな俺を見て、その顔に笑みをのせ、俺の頭を軽く撫でた。
「私もさ、そういうのあった。それって、おかしいわけじゃないんだよね、きっと。自分が成長する中での鏡のような、目標のような…」
雫姉はそこまで言うと、俺の両頬を掴んで、にっこりと笑って
「あんた、いい目標あってよかったんじゃない?篤希はあんたほどクソガキじゃあなかったって比べてやるわ。見本にして、せいぜいクソガキから卒業してみせな」
雫姉のその言葉に、どこかムカついた記憶はかなり根強い。
そりゃ同じ血が流れていたって、篤希は俺より男前だと思うし、背も高いし…。
あいつに劣るって思うところを見つけると悔しい。
今もそうだ。
俺も早く彼女つくらないと。
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