『侑也』

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だから、まぁ、寄ってくる女とは片っ端からつきあった中学時代。 篤希に彼女ができると別れて、また新しいのとつきあって…なんて繰り返した。 どこか比べてしまう。 自分の彼女と篤希の彼女。 そして見劣りするなって思ったら飽きる。 去年、篤希がつきあいだした彼女は見たことはない。 それでもあいつが携帯握って楽しそうに話しているのを見ると、きっといい女なんだろうと思う。 篤希が携帯の通話を切って、何気なく篤希を見ていた俺と視線がぶつかった。 「侑也、なに見てる?」 篤希は彼女と話していた余韻でも残っているのか、どこか楽しげに俺に声をかけてくる。 「べっつに。長いな、その彼女と」 「そうでもないと思うけど?去年の秋からだから、まだ半年程度」 「遠距離で全然会えないだろ?それで半年は長いって」 「侑也は近くの彼女でも作ればいいんじゃないのか?ほら、前に逆ナンしてきた3つ年上の…、名前なんだっけ?」 「和美ちゃんと由里ちゃん」 俺が答えると篤希はそうだったと言わんばかりに頷く。 あれだ。篤希はきっと自分の興味ある女の名前しか覚えない。 それはいいことなのか悪いことなのかわからないけど。 「年上彼女っていうのもいいんじゃね?」 篤希にそう言われると、なんとなくそうかもしれないと思う俺がいる。 コンプレックスで憧れで友達で先輩で兄貴で家族で…。 篤希の何気ない言葉にさえ敏感に反応してる俺がいる。 だからだ。 和美ちゃんとつきあいだしたのは。 俺がめちゃくちゃ惚れてどうしようもなく…なんていうつきあいなんかじゃない。 どちらかというと和美ちゃんのほうが俺に惚れていた。 たぶん。きっと。 3つも年下の高校生なんかのどこがいいのか、まったくもってわからないけど。 年上彼女という割には、和美ちゃんはそんなに年上を意識させない女で。 ショートボブの髪は真っ黒で、色気っていう色気も別になくて。 背は156、職業は保育士、車は青い軽に乗っている。 保育士だからか、同じクラスのケバいギャル系女たちよりも、ぜーんぜん清純って言葉の似合いそうな人だった。 迂闊に手を出すとあとあと面倒臭そうで、はっきりいって俺が絶対に冗談でも手を出さない種類の女だった。
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