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年上やキャリアウーマンが好きなのかと言えば、そうでもない。
今の俺の彼女のシオリは、仲間に無理矢理頭数として連れて行かれた近隣の短大との合コンで出会った。
その合コンでシオリが俺を気に入ったらしく、俺はシオリからメアドを渡された。
それがシオリとの始まりだ。
正直、俺は自分がモテるとは思っていないし、仲間だって俺を男前とは決して言わない。
女の子からの評判なんて知るはずもない。
車の助手席に乗り込むと、彼女は車を走らせた。
新堂恵梨子。それが彼女の名前だ。
最初に会った時に名刺をもらった。
「ちゃんとシートベルト締めてね、雅」
「…はーい」
俺は助手席にだらんとだらしなく座り、シートベルトを締める。
「今日、いきなりメールくるからびっくりしちゃった。水曜に会えるのにどうしたの?」
恵梨子は車を運転し、前を向いたまま俺に問いかける。
「別に。ただ会いたかっただけやで」
俺は恵梨子と話す時だけ、言葉を地元の関西へと戻す。
恵梨子が関西弁好きみたいやから。
俺は恵梨子のペットみたいなもの。
恵梨子といる時は恵梨子の望む男になる。
「あははっ。そんなにうれしいこと言ってくれても、金額上げてあげない」
恵梨子は楽しげに笑みを見せて、赤信号にブレーキを踏む。
俺は片腕をのばして、恵梨子の頭にふれると、こちらを向かせてその口紅の塗られた唇にキスをした。
舌を絡めるキスは恵梨子に習ったようなものだ。
恵梨子に会う前の俺とは確実に違う。
俺が恵梨子とのキスを楽しんでいると、後ろからクラクションが聞こえてきた。
「ん…っ、雅、信号…」
恵梨子は少し俺を突き放すように、俺の胸に片手をあて、俺は唇を離した。
シートに座り直すと、恵梨子は車を出した。
信号は既に青に変わっていた。
恵梨子の住むマンション、その部屋に着くと、恵梨子は俺に甘えるように体を寄せてきて、俺は恵梨子を抱く。
思いっきりがんばれば、俺が会いたい言うた気持ち、伝わるんちゃうやろかって期待して。
やけど…、恵梨子はそんな簡単な女やなかった。
事が終わると、恵梨子は裸のままくわえ煙草で財布に手をのばし、俺の前にいつものように5枚の札を出す。
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