『雅』

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俺と恵梨子は、あの図書館で会った。 夏休みの課題である論文の作成のために、普段絶対に近寄ることのない図書館に通う毎日。 昼飯を食おうと図書館を出て、冷房で冷えた体を暖めようと階段へ出る。 真夏の猛暑の炎天下。 木陰にいても、全然涼しくもない。 目当ての大学へ通うための上京。 上京するための大学という口実。 俺は買ってきたパンをかじりながら、たいして夢も希望もない現実に、地元に戻ることも考え始めていた。 静かな平和な風景を階段に座って見ていた。 青い空が広がっている。 時折吹く風だけが心地いい炎天下。 そろそろ戻って続きでもやるかと立ち上がる俺の目に、下からスーツ姿の女が階段を上ってくるのが見えた。 太陽の眩しさに目を細めてその女を見ると、なかなか俺好み。 細い足もヒールの足首も、その髪をまとめあげた姿も。 近づくにつれて、はっきりと見えてくる顔も美人。 目が合った。 じっと見てしまっていたことを悟られないように目を逸らして、俺は階段を下りようとした。 「ねぇ」 声をかけられたような気がして、立ち止まって彼女を見ると俺に笑いかけていた。 柔らかい笑みに鼓動が小さく音を立てる。 俺より年上…だろうなと思う。 「暇?私と遊ばない?」 それは、世間で言うところの逆ナンってやつだったのだろう。 その日、恵梨子の奢りで、恵梨子の車で遊びまくって、その夜、俺は恵梨子に誘われるがままに恵梨子を抱いた。 そのあと、恵梨子は俺に金を出したのだ。 「毎週水曜日、私と遊んでくれるなら、毎回5万あげる」 恵梨子のその言葉にはもちろん驚いた。 有り得へんっ!って心の中で叫びまくりながらも、恵梨子とまた会いたいって思ってたし、その契約を俺は飲んだ。 そして、今の俺がここにいる。
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