70人が本棚に入れています
本棚に追加
/194ページ
目覚まし時計が耳元で鳴り響く。気が付くと、僕はベッドの上で寝ていた。
夢……?
「壱樹(いつき)、ご飯出来たわよ!」
下から母さんの大きな声が聞こえる。
やっぱり夢か……。
そう思いつつ、ベットから降り、壁にかけられていた濃い緑色の制服に袖を通す。そして、台所のある1階へと降りていく。
「早くしないと、学校に遅れるわよ」
朝の第一声がこれはどうなんだろう?
などと、寝呆けた頭で考えつつ、テレビを付ける。
「本日の天気は……」
テレビを見ながら、テーブルに準備されていたコーヒーとパンを食べる。
「お兄ちゃん、ゆっくりしてるけど大丈夫なの?」
話し掛けてきたのは、妹の桜(さくら)。
僕と同じ黒い髪に黒い瞳の小顔な妹。中学1年生にしては、しっかりした性格で、よくできた妹だと思う。融通がきかないのが、たまにきずだけど……。
「まだ15分だろ? 大丈夫、大丈夫」
湯気が立っているコーヒーをゆっくりと口元に近付ける。
「ここの時計、10分遅れてるよ」
「えっ!?」
テレビに表示されている時間は、確かに10分進んでいる。
「ヤバい! ご馳走様!」
慌てて鞄を持ち、玄関へと向かう。
「まだ、ご飯残ってるじゃない!」
「時間ないよ! 行ってきます!!」
母さんはテーブルの上にある食べ残しを見たようだ。しかし、僕にはゆっくりとご飯を食べている余裕はなく、そのまま勢い良く家を出る。
最初のコメントを投稿しよう!