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「ふうーん、確かに変な夢ね」
考え込むように腕を組み、真剣な顔をして呟く楓。
「うん。それに……、夢なのに妙にリアルだったんだ……」
「あれじゃない? 壱樹、よく携帯小説書いてるじゃない? それのせいかもしれないよ?」
楓を見てみると自信に満た表情をしている。
「そうかなぁー?」
「きっとそうだよ! ……それにしても、よく書けるよね?」
不思議そうに首を傾げながら楓は尋ねる。
「何が?」
「小説よ、小説!」
「それ以外にはないでしょ?」と言わんばかりに楓は話す。
「あっうん。だって、小説の中だったら勇者にもなれるし、名探偵にも。なんでもなれるんだよ?」
「それはそうだけど……。私はやっぱり体動かす方が好きだな。今日から高校2年生になるんだし、部活でもしたら?」
楓の話はまるで僕を勧誘するかのようだった。
運動出来ない事知ってるくせに……。
「ううーん、やっぱり、僕は書いてる方がいいな」
始めから楓の提案を受け入れる気は僕にはなかった。
「運動したら、少しは男らしくなるのにな……」
少し目線を落とし残念そうに呟く。
「じゃあ、もしそんな小説みたいな世界に行けるとしたらどうする? やっぱり行ってみたい?」
相変わらずの転換の早さに感心しつつ、興味津々といった顔で聞く楓に答える。
「そうだな……。不安もあるけど、やっぱり行ってみたいな」
「そっか、行けたらいいね」
僕の答えに満足したのか、楓は満面の笑顔で返す。
「うん」
そして、僕達は他愛もない話をしながら学校に向かった。
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