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真っ白な病室には飽きた。
ベッドには癖のある文字で「柴原 一樹」と書かれている。
俺はその文字を親指の腹で擦る。
するとそれは少しだけ薄くなったが、消えるはずもない。
友人が見舞いと称して置いていった雑誌を左手でパラパラとめくる。
やたらと露出度の高い水着を着たグラビアは、俺の趣味ではない。
これを置いていったヤツの趣味はこうなのか。あんな爽やかな顔をして……
退院したらヤツの彼女にこのグラビアを見せてやろう。
雑誌を閉じる。
さて、暇だ。
どうしようか、と口に出して自分の右足と相談する。
ギブスで固められたそれは答えない。
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