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しかし、彼女は落とし物の財布を凝視して首を左右に傾け続けている。
俺は出来るだけ自然に立ち止まる。
しばらくちらちらと彼女の様子を見ていたけれど、
堪らなくなって道を引き返した。
しゃがみこんで財布を見る彼女の前に立つと丁度陰になったらしく、
彼女は俺を見上げた。
「あの、それ俺の財布なんですけど」
困惑しながら言うと、
彼女は慌てて財布を差し出した。
「いや、普通目の前で財布落とされたら
『これ落としましたよ』
って反応しません?
俺、そーゆーの期待して落としたんすけど、
やっぱ財布じゃダメすか?
白いフリルのハンカチ用意しなきゃダメすか?」
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