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『あの時、彼女はおまえのことが好きだったんだよ』
いきなり彼の口から出てきた言葉に
『いまさら何言ってんだよ、昔の話し』
と小さな虫を払いのけるように交わした、動揺を隠せない僕の言葉。
『今さらかもしれないけど、今だから言うんだ、おまえには。ホントのこと』
彼の表情は、決して僕をからかっているわけではないことを、僕だってわかっていた。
だから、あんな言い方してしまったんだと。
『ふざけるな。いまさら言うことじゃないだろ。おまえに何がわかる、あの時の気持ち』
あれから、早一時間ほど、タバコの煙りを窓から吐き出しながら、二人海沿いの路に漂う香りを体に染み付けていた。
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