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高校卒業して、ありきたりの『またな』と、言葉を投げただけなのに、彼女になんて言葉をかけたらいいのか、考えつかない。
黙っていた幼なじみの彼が、窓の外に向かって深呼吸をしてから、再び会話を始める。
『おまえ、知ってるか?』
『ん?』
『おまえが卒業して地元から引っ越す前日、おまえんちの前で彼女が立ちすくんで泣いてる姿、俺見たんだ。』
『うん』
胸が締め付けられて、返事を返すのが精一杯になる。
『俺もやめときゃいいのに、黙って見てられなくてさ。近寄って、どうして会わないの?って、言ったらさ、泣きながら走り去ってしまって。あの時点で、ああ俺負けたなって。』
少し気が落ち着いた彼は、冗談まじりで愚痴を言うように話した。
『そっか』
僕は、その事実を今まで知らなかったわけで、とうてい笑うことなどできなかった。
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