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しとしとと降り続ける雨は
黒い傘を濡らして
金具の部分からまた滴として地面に流れ落ちた。
帰り道、僕は草壁を連れることもなく独りパシャパシャと靴で水音を立てながら歩いていた。
その先に
電柱でうずくまる人物。
それは僕が誰よりも愛しくて
僕が誰よりも悲しく想う人。
「……骸」
声をかけると骸は
まるで捨てられた猫のような
悲しげな表情を僕に向けてきた
【──ドクン、】
傘を投げ出した僕は
いつの間にか骸を抱きしめて
それから何故か
泣いていた。
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