第一章 休日は続かない

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小高い丘の上、ベランダからの見晴らしは良かった。 今日は雲ひとつ無い晴天。 眼下に見下ろす……というほどのものでもないが、それでも街の景色を上から眺めると言うのはどこか心地よい。 街並みの向こう遥か彼方には、うっすらとした白い線が地と天を繋いでいる。 あの『塔』がここから見えるということは、空気が澄んでいる証拠だ。 今日は良いことがあるのではないかと、自然と顔が綻んでしまう。 傍からから見ればさぞ気持ち悪く見えるだろう。 だが、まともな休日が一ヶ月振りだと聞けば誰も咎めることは出来ないはずだ。 ベランダの手摺りに体重を預け、同じく手摺りの上に乗っかったマグカップを手に取る。 ズズッと啜ると、濃厚なコーンポタージュと『長閑』が喉を通るのを感じた。 「ああ、世の中がこんなに素晴らしいとは知らなかった。 まるで体が清められていくようだ」
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