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ポタージュの香りと共に吐き出した言葉は、小鳥の小さな囀りに混じった。
まったりした時間を味わうようにしてくつろぐ男。
だが、一筋の砂煙が丘を登ってくるのを見たところで、そんな平和な時間も長くは続かないと知る。
おそらく数分と掛からずにここまで辿り着くだろう。
男は盛大にため息を吐いてから、ベランダの手摺りから身を離した。
アレが何なのかは知っているし、どうして此処に近づいているかも予想がついている。
十中八九、アレは自分を攫いに来る。
マグカップの中身を飲み干してから、男はベランダから家の中へと入った。
二階から一階へ降りたところで、台所にいるエプロン姿の女性と顔を合わせる。
「昼飯はなんだ?」
女性はそれにニコッと笑顔を見せた。
カールされたブロンドヘアーがそれに合わせてフワフワと踊って揺れる。
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