第一章 休日は続かない

3/11
前へ
/172ページ
次へ
ポタージュの香りと共に吐き出した言葉は、小鳥の小さな囀りに混じった。 まったりした時間を味わうようにしてくつろぐ男。 だが、一筋の砂煙が丘を登ってくるのを見たところで、そんな平和な時間も長くは続かないと知る。 おそらく数分と掛からずにここまで辿り着くだろう。 男は盛大にため息を吐いてから、ベランダの手摺りから身を離した。 アレが何なのかは知っているし、どうして此処に近づいているかも予想がついている。 十中八九、アレは自分を攫いに来る。 マグカップの中身を飲み干してから、男はベランダから家の中へと入った。 二階から一階へ降りたところで、台所にいるエプロン姿の女性と顔を合わせる。 「昼飯はなんだ?」 女性はそれにニコッと笑顔を見せた。 カールされたブロンドヘアーがそれに合わせてフワフワと踊って揺れる。
/172ページ

最初のコメントを投稿しよう!

558人が本棚に入れています
本棚に追加