怪物 「起」承転結

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近年の例では1989年オーストラリアのクィーンズランド州で民家の庭に1000匹のイワシが降ったとされる。 私はそんな膨大な事例の中から、石が降ったという記録を探し出していった。 1968年宮崎県の迫町で、ある薬局に小石に雨が降り、それが誰の悪戯とも判明しないまま半年間も続いたという事例。 そして1820年イギリスのサウスウッドフォードでは、ある家に石の雨が降り、通報によって警察官が配置される事態になったが、結局その石がどこからやって来るのか分からなかったという事例。 1922年カリフォルニア州チコの町の片隅に降った石の雨は、その現象が数ヶ月にも及んだが大学の調査チームにもその正体が分からなかった。 まだまだあったが、どれにも共通しているのは石の雨が広範囲に渡って降ったというわけではなく、むしろ極めて狭い範囲に集中してたということだろう。 1820年小石川の高坂鍋五郎の屋敷だとか、1600年代ニュー・ハンプシャーのジョージ・ウォルトンの屋敷だとかという記録を見ると、実にその個人に対して石の雨という攻撃が行われているような感想を覚える。 まるでその家の持ち主に恨みを持つ人間の仕業であるかのような気がする。 石がどこから来るのか分からないと言っても、誰かが見張っている時にはその悪戯を決行しなければいいだけの話だ。 そして監視がない時を見計らって、物陰から投石をする。 その場に居合わせない人間が考えると単純な構造に思えるけれど、実際はどうなのだろうか。 その『世界の怪奇現象ファイル』には、このファフロツキーズ現象についてのいくつかの仮説が紹介されていた。 チャールズ・フォートは地上からのテレポーテーションによって移動した魚やカエルなどが大気圏中のある空間に蓄えられ、それが時に奇怪な雨となって地上に降り注ぐのだと考えた。 他にもプラズマや空中携挙といった荒唐無稽な説もあったが、現実的に思えたのは飛行機からの落下説と竜巻説だった。 飛行機説はほとんどの落下物を説明しうる可能性を持っているが、個々の事例においてその飛行機の目撃が否定されるケースが多く、魚介類の落下など時代的に飛行機の登場の前後にあってもその出現パターンが変わらないように見える事例を解釈し辛い。 また、同じ場所に長期間に渡ってその現象が続くケースの説明にはならない。
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