1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ありがと。じゃあ、何を頼めばいいかしら?」
「そうですねぇ、今の気分は?」
「意外と悪くないわ、私、こういうケースは少なくないから。何だか、ちょっとしたお姫様ってところかしら?」
女は髪をかき上げながら少し笑みを浮かべて褐色のバーテンダーを見つめた。
「・・・・そう・・ですか・・承知しました。用意しましょう」
褐色のバーテンダーは女の“誘惑”とも取れるその仕草に少し戸惑いながらも気を取り直し、冷えたミキシンググラスを取り出した。
ホワイトラム 1/2 スウィートヴェルモット 1/2 をミキシンググラスに注ぎ、氷を詰め、手早くステアしてから冷やしたカクテルグラスに注ぐ。
「お待たせしました。リトルプリンセスになります」
「リトルプリンセス・・かわいい名前ね。私に似合うかしら?」
「ええ、よくお似合いですよ」
「ありがと。それにしてもいい色ねぇ、頂くわ」
ボルドーカラーに染まったカクテルグラスを手に取るとスポットライトに透かして眺め、そのままグラスを傾けた。
「よく冷えているわ、少し強めなのね。甘くて飲みやすいから、飲みすぎて足を取られそうだわ」
女はグラスを持ったまま笑顔でそう言うと、グラスリップに付いた口紅を指で拭った。
「ええ、強めの酒がお似合いですよ」
ボルドー産の赤ワインをワイングラスに注ぎながら褐色のバーテンダーが答える。
最初のコメントを投稿しよう!