ネイキッド・プリンセス

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「あなた、ワインが好きなの?」 「ええ、ワインは確かに好んで飲みます。ですが今夜は同じ色合いのものを是非にと・・」 「ありがとう、嬉しいわ」 女は笑顔でそう言うとグラスに半分ほど残っていたリトルプリンセスを一気に飲み干し、 「おかわりをもらえる?」 グラスをスッと前に出し、タバコに火をつけた。 「はい、かしこまりました」 褐色のバーテンダーはワイングラスをカウンターに置き、ミキシンググラスを取り出した。 「私・・魅力ないかしら?」 「いいえ、そんな事はないですよ」 「魅力がないとは言えないものね」 「いえいえ、本当に」 ミキシンググラスにホワイトラムを注ぎきったところで、褐色のバーテンダーは手を止め、女に話し始めた。 「似たようなもので別のカクテルをお出ししてもよろしいでしょうか?」 「・・・別に構わないけど、途中でしょ?いいのかしら」 「お気遣いなく。少し手を加えるだけですから」 褐色のバーテンダーはそう答えるとすぐに酒を注ぎ始めた。 ホワイトラム1/2、スウィートヴェルモット1/2、アプリコットブランデー4dashes、レモンジュース4dashes、グレナデンシロップ2dashes、氷を詰め、手早くステアしてカクテルグラスへ・・ 「お待たせしました。ネイキッドレディになります」 「ネイキッドレディ・・・」 「はい、裸の貴婦人という意味合いを持つカクテルです」 「ええ、どういう心遣いかしら?」 「もう少し異性に対して肩の力を抜いてみてはいかがでしょうか?」 「フフ、裸でぶつかれってことね、ありがとう、冷たいうちに頂くわ」 女は嬉しそうに笑顔を一つ見せると、先ほどとは少し違う、濃紅色なったカクテルを、口に滑らすようにグラスを傾けた。
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