凌の秘密

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延長9回表栄光中学の攻撃、打順は1番からの好打順である。 ここまで栄光打線は帝徳中学エース月宮 尽の前に僅か2安打と完全に抑えられている。 栄光中学もエース凌が去年の優勝メンバー8人を残す帝徳打線を6安打に抑える好投を見せている。 この回で決めたい栄光はどうにかして今日2安打の4番斎駕に回したいところである。 だが1番2番と簡単に打ち取られてしまいあっという間に2アウトになってしまった。 次の打者が塁に出れなければ栄光は厳しくなってくる、その事を1番分かっている人物は右のバッターボックスに入る。 ウグイス嬢『3番ピッチャー藤田君』 この回で決めないとヤバいな‥肘めちゃくちゃ痛いしそれにスタミナ持つかどうか… そう心の中で呟くとバットを握りしめている手に力が入る。 凌『しゃあピッチ来い!』 月宮は振りかぶるとよどみのない綺麗なフォームから投げた。 シュッ!パシン! 際どいコースにストレートが入り込んでるが… 凌『ボールか』 うわっギリギリだよあぶね手出しそうだった… 月宮は振りかぶり2球目を投げた。 シュッ!クイ!ドン! 凌『痛っ!』 鋭く変化したインコースへのシュートは凌の左脇腹に当たった‥いや正しく言えば執念で当たりに行ったのだ。 痛みでしゃがんでいたがすぐに立ち上がり1塁に向けて歩いていった。 ウグイス嬢『4番ファースト斎駕君』 ここでひときは大歓声が沸き起こる豊中球場。 凌は斎駕にここで打ってもらわないと困るとアイコンタクトで伝えると笑顔で頷いた。 斎駕は右のバッターボックスに入ると目を閉じ集中し始める。 月宮はその間に振りかぶっておりいつでも投げる体勢になっていた。 そして月宮が渾身の一球を投げた瞬間斎駕はさっきまで目を閉じていた目をパッと開くと目の前まできていたボールを振り抜いた…
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