祭囃子―――――夜叉

2/4
前へ
/93ページ
次へ
万事屋の仕事帰り……ふと耳にした笛の音。 浮き立つような……それでいて心細くなるような。 「……季節外れの祭の稽古か?」 微かに、だが確かに聴こえてくるその音色は銀時の心を捕らえる。 脳裏に浮かぶは想い人との幼き日々。 祭好きな彼と一緒に僅かな小銭を手に夜店を冷やかし。 夏の夜空を彩る花火にみとれ。 そして祭の後は何故だか分からない寂しさで……二人とも帰り道は無言だった。 そんな祭の季節は毎年必ずやってきて。 ……足りないのは隣にいる筈の彼の姿だけ。
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

534人が本棚に入れています
本棚に追加