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地平線はみつめようにもみつめられない。
陽炎の亡霊達が起ったり坐ったりしているので、
――僕は蹲んでしまう。
「お兄ちゃん―――なんで、助けてくれなかったの?」
ふいに罪悪感に襲われた。部屋の中からその声が聞こえて。
俺は何をしているのだ。壊して壊して壊して壊して、楽しいか。
―――あぁ楽しいさ。ほしかったものが手に入って満足している。
そう思いたいのに、俺の奥底に潜んだ何物かが、そうさせてはくれない。
部屋のなかで倒れる音がした。あいつが出てくる。
「お前さ、あれはひどくねぇか?」
自分のしたことを棚に上げて。自分のしたことを認めたくなくて。
「―――他人のこと、ぜんぜん言えないくせによく言うよ」
あぁ言えないさ。だから何だ。悪いか。いや俺は悪くない。
「で、どうするよ? これから」
「知らねぇよ。好きにしろ」
意外にもあっさりした答えが返ってきた。
「じゃぁそうするよ」
俺とあいつの妹の契約がスタートした。
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