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「総司。花見に行きてぇか?」
土方は沖田に背中を向けたまま声をかけた。
「はい!」
はじけるように沖田は即答する。
「そうか。
それなら行ってるみるか。」
「どうしたんです。急に。
私は嬉しいですけど…。」
不思議そうに沖田は首を傾げた。
「なあに、ちょいと去年の花見を思い出してな。
そういえば今年はまだ花見に行ってねぇなと思ったまでだ。」
「そうですね。
いろいろあって、それ所じゃありませんでしたから。」
沖田は遠くに目をやり定まらぬ自分達の現状に眉をしかめた。
「永倉達には悪いがせっかくできた時間だ、少しばかり好きに使っても罰は当たんねぇだろうよ。」
「土方さんがそう言うんでしたら私には異存はありませんよ。」
沖田はにこにこと笑い早くも足は桜の木があるだろう場所、花びらが流れてくる方向に向いている。
「はぐれついでの迷いついでだ。花見と洒落込むか。
ただし、食い物も酒もないがな。」
土方も口の端を上げ機嫌が良さそうに見える。
「そんなものかまいませんよ。
去年の二の舞はごめんです。
騒ぐのは楽しくて好きですけど、後始末が大変でしたから。
今日は二人で静かに桜の花を堪能しましょう。」
「そうだな。」
土方は楽しそうな沖田を見て目を細めた。
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