桜空

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      「早く行きましょう!  土方さんの気が変わらないうちに!」  そう言うと沖田は土方の腕を掴んで引っ張った。その急な力に土方は体を傾かせる。足を踏ん張りなんとか醜態を晒すという事態は避けられた。が、土方の目は釣り上がり眉間に皺が寄った。 「お前っ!なにすんだ!  危うく転ぶところだったじゃねぇか。」 「わぁ、すいません!  嬉しくて、つい……。」 「少しは考えてから行動しろって言ったばかりだろうが。  お前には記憶力っつうもんがねぇのか。  ったく、餓鬼みてぇな真似すんじゃねぇよ…。」  土方は沖田の手を振りほどききつく睨みつけた。 「………。」  沖田がしょんぼりとうなだれて、言いよどんだ。つい先ほどまでの元気が嘘のように消えている。 「ハァ~、  ……注意しろっていってるんだ。  しかたねぇなぁ。  ほら、行くぞ!」  土方は仕方ないといった表情を浮かべ苦笑した。  近藤を筆頭として総じて試衛館の人間は沖田に甘い。土方とて例外ではない。しおらしい姿を見せられれば怒りの感情などすぐに溶けてしまう。  
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