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土方は隣を歩く沖田に目を向けた。
先程自分の腕を握った沖田の手を思い浮かべる。それは大きくごつごつとした大人の手だった。日頃の鍛練を伺わせる剣だこのある剣士の手。
(もう、子供の頃の小さな手じゃねぇ。
だが…、中身はまだまだ餓鬼のまんまだ…。)
土方には危惧していることがあった。
素直でまっすぐな総司。世間の厳しさは知っていても、世間の汚さや醜さは知らない。そんな総司がこれからの苛酷で厳しい状況に耐えられるのだろうかと。
自分や近藤さんにはその覚悟がある。総司にだってあるだろうが、それの本当の意味を理解しているとは思えない。今更帰れと言っところで総司がそれを受け入れるわけはない。
この京の状況を考えれば手を汚さずにはいられない。人を斬らねばならぬ事は必然。
総司は自分の手が赤く染まってゆくことに、いや赤いだけではすまないだろう。赤黒く、どす黒く染まることになるかもしれない。そうなった時はたして正気を保っていられるのか。
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